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任官と退任のご挨拶

私儀、来月から弁護士任官制度によって裁判官に採用され、大阪高裁に赴任することになりました。岡山弁護士会からは初の弁護士任官です。弁護士任官の推進は岡パブの設立目的の1つでもあるところ、この分野では設立8年目にして、ようやく目に見える成果を上げたことになります。

任官するのに伴い、今月末をもって弁護士ではなくなり、したがって岡パブの所長職も退任します。16年間の弁護士生活(そのうち後半の7年半は岡パブに所属)で経験した様々な出来事を思い起こすと、さすがに感慨深いのですが、反面、立ち止まって感慨に浸っている暇はなく、弁護士任官の意義を実現するためにも、1日も早く新しい職務に慣れて、裁判官業務を全うできるよう、精進と研鑽を積む必要があります。

岡パブの新所長には、岡パブ創設メンバーでもある井上雅雄弁護士が就任します(岡パブには3年ぶりの復帰です)。井上弁護士は、高齢者・障がい者の権利擁護分野のエキスパートの1人であり、この分野における、福祉関係の専門家らとも連携しての岡パブの取組を更に進化させて、都市型公設法律事務所としての岡パブの存在意義を、一層高からしめてくれるはずです。今後も、岡パブの活動に対する皆様のご理解とご支援をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
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感服させられた本

最近に読んだ「交響曲入門」(著者:田村和紀夫、講談社選書メチエ)という本には、すっかり感服させられました。「印象や感情」によってではなく「構造やレトリック」から交響曲を解説するというスタンスの本で、「入門」というタイトルではあるものの、代表的な交響曲について、素晴らしく明晰かつ内容豊かな分析がなされており、おかげで、頭の中で再現できるくらい聴き込んできた、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナー、マーラーらの交響曲を、とても新鮮な思いで聴き直すことができるようになりました。人生を楽しみを増やしてくれた著者に、感謝を捧げたい気持ちです。

この本の記載の具体例として、チャイコフスキーの「悲愴」交響曲の第四楽章についての解説を、挙げさせていただきます。この楽章については、「印象や感情」に基づく解説本の代表格である「クラシック音楽鑑賞事典」(著者:神保瓊一郎、講談社学術文庫。なお、この本は、角川文庫から「名曲をたずねて」という題名で出版されていた当時、中学生だった私が愛読して、大いに感銘を受けていた本でもあります)では、「第四楽章:絶望と空虚な諦めは、ここで最後の喘ぎをする。死は切々として迫り、終焉はまさに告げられようとしている。厳粛な和声は金管楽器の中から告げられ、曠野を吹く木枯らしのごとく蕭々として寂しい。」という、とても文学的な解説がなされています(私自身、この手の解説も、それはそれで好きです)が、「交響曲入門」では、「・・・楽章が進むにつれて音楽は加速する。その頂点で第四楽章の『悲しみのアダージョ』が鳴り響く。フィナーレに遅い楽章を置くとは、前代未聞といわなければならない。この楽章の中でもテンポは徐々に速くなるように意図されており、最終的にコーダに行き着く。そこでは不吉なドラが打ち鳴らされ、荘重なコラールが続く。それからアンダンテ・ジュスト(正確に歩く速さで)の歩みで、静寂の中に消えていくのである。チャイコフスキーはこの曲を『人生』と呼んでいたというが、曲の終結はまさに人生の終わり、『死』を表している。」という、分析的・客観的で、なおかつ楽曲の本質を見事に捉えた解説が、なされています。

法律家たる者、「交響曲入門」のように、明晰・客観的な事案分析を示しつつ、当事者の思いを十分に伝える書面を、書きたいものです。そのためには、楽曲ならぬ事案を十分に検討して、その本質を見極めることが不可欠であるのは、言うまでもありません。

映画と裁判用書面の共通点と差異

今夏、「マーラー~君に捧げるアダージョ」という映画が、岡山の「シネマ・クレール」で上映されていたので、今年が没後100周年になる、この作曲家の交響曲全集のCDを9セット所有している私は、久しぶりに映画館に出かけました。少なくともマーラーを愛聴する者にとっては、なかなかおもしろく、未完の遺作である交響曲第10番の第1楽章を、じっくりと調べて、その魅力を再認識する機会を与えられたことも含め、「見に行って良かった」と思える映画でした。

ケン・ラッセル監督の怪作「マーラー」との比較や、ヴィスコンティ監督の名作「ヴェニスに死す」におけるマーラーの音楽の使い方との比較等、いろいろと書きたくなることはあるのですが、このブログで触れたいのは、この映画を見て、「2時間弱で起承転結を描くには、テーマを絞って、他の部分は切り捨てざるをえない」ということを、あらためて考えさせられたということです。具体的には、この映画では、妻アルマの不貞により強い精神的衝撃を受けたマーラーが、フロイトの精神分析を受ける、というシチュエーション(ちなみに、このシチュエーションはフィクションではなく歴史的事実です)を通して、マーラーとアルマとの関係が描かれるのですが、マーラーを語るうえでの、その他の重要な要素、例えば「ユダヤ人であったことと、そのことによる人生への影響」や、「常にまとわりついていた『死』についての強迫観念」といったことには、殆ど触れられていません。2時間弱という限られた時間内でアルマとの夫婦関係を掘り下げて描くために、そこに焦点を絞り、その他の事柄については、意識的に触れないようにしたのでしょう。

実は、我々弁護士が、訴状や準備書面といった裁判用の書面を作成する際にも、同様な選択がなされています。ある法律問題については、それに直接的な関係をもつ事実のほかに、その前後や周囲に様々な事実や事情があることが多いのですが、裁判用の書面では、そこに記載する事実や事情を取捨選択することになります。そのような取捨選択をどのように行うかが、弁護士の腕の見せ所ということになるわけですが、ふと立ち止まって、自分の書いてきた書面を思い起こしてみると、必要十分に事実関係を拾えているか、不要な事実や事情を漫然と記載した、冗長、散漫な書面になっていないか、逆に、本当に重要な事実を書き落としていないかどうか、内心で自戒せざるをえません。まぁ、映画制作と裁判用書面作成とでは、当然ながら大きな差異もあるわけで、たとえば、あの記念碑的名作「2001年宇宙の旅」(ちなみに、あのオープニングで鳴り響いていたR・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」は、カラヤン指揮ウィーン・フィルの演奏です)のような、「何だかとても壮大なテーマを訴えたいのはわかるけど、それが具体的に何を意味しているのかわからない」結論は、裁判用書面では完全にNGですけど(笑)。

ゴーヤ(緑のカーテン)

夏の節電と食糧確保のため、南向きの自宅リビングルームの窓に「緑のカーテン」を作るべく、先月、プランターやらネットやら支柱やらを買い込んで、ゴーヤの苗9本を植え付けました。約1ヶ月経った現在、まずまず順調にツルが伸びて葉が繁ってきています。

ゴーヤのツルは、放っておいたら、あちこちの方向に伸びていってしまいますが、こちらがテープや紐で誘導してやれば、こちらの狙い通りの方向に伸びてくれます。その他にも、葉が萎れているのに気づいて水をたっぷりあげたら、すぐに元気を取り戻したり、黄色くなった葉があるのに気づいて追肥をやったら、目に見えて成長が良くなったり、こちらが労力をかければ、その期待に応えてくれる率が高いのが、植物のありがたいところです。

それに対し「人間」は、なかなかそうは行きません。刑事事件や少年事件で、弁護士が採算を度外視して本人の立ち直りのために多大な労力をかけても、本人がその期待を裏切って再犯に手を染めてしまうケースは、数多くあります。「それでも、『人間』って面白いし素晴らしいし、『人間』を信じたい。これからも『人間』と関わっていきたい」と思えるかどうかが、その弁護士が刑事事件や少年事件に情熱を持ち続けられるかどうかの、重要なポイントの1つだと思います。また、それだけに、自分が弁護人や付添人として関わった被告人や少年が、立派に立ち直っている様子を見聞きすることは、一際うれしいものです。

あの日から10年

 今日は、ハンセン病訴訟における、国の隔離政策の過ちと、それに基づく賠償責任を正面から認めた熊本地裁判決について、当時の小泉首相が控訴断念を発表した、あの劇的な日から、ちょうど10年目の記念日です。私はあの夜、弁護団の一員として、有楽町駅前の沸き返るような「祝勝会場」にいました。ハンセン病療養所「長島愛生園」で原告の方々と喜びを分かち合った熊本地裁判決当日の1日とともに、10年経った今でも鮮明に記憶に残っている、本当に素晴らしい1日でした。

 この訴訟で弁護団は、「被害に始まり、被害に終わる」をスローガンに、毎週のように療養所に足を運んで、隔離政策による被害の実態の把握に努めました。また、なまじ法律家としての経験則がある弁護団のメンバーよりも、隔離政策による被害を身をもって経験されてきた元患者の方々の方が、控訴断念を勝ち取ることについて、より強い確信をお持ちでした。この種の訴訟では、被害実態の正しい理解が何よりも重要であることを、あらためて痛感します。

 現在、各地のハンセン病療養所の将来構想が打ち出されていますが、その実現への道のりは容易ではないのが実情です。また、残念ながらハンセン病患者・元患者の方々に対する差別・偏見が無くなったわけではない現状に鑑みても、この訴訟のスローガンであった「人間回復」は、未だ道半ばであると言わざるをえません。判決と控訴断念の10周年を機に、この問題について、皆さんにご理解を深めていただくことを、願ってやみません。 
プロフィール

岡山パブリック法律事務所

Author:岡山パブリック法律事務所

◆病院や介護施設で働く福祉専門職(ケースワーカーやケアマネージャー)の皆様へ◆
岡山パブリック法律事務所では、福祉専門職の方から直接、担当されている入居者・患者さんの件についてご連絡いただいた場合、その方が所属する施設への出張相談を無料で受け付けております。担当されている件でお悩みの福祉専門職の方は是非1度ご連絡ください。

◆はじめに◆
岡山パブリック法律事務所は、利用しやすい「市民の駆け込み寺」的法律事務所として、平成16年8月に地方都市で初めて開設された「都市型公設事務所」です。現在、岡山県内各地に3つの支所を開設しており、成年後見業務に特に力を入れています。現在当法人で成年後見人等に選任されている件数は300件を超えており、この分野では国内でもトップクラスの実績があります。

◆春日町本部◆
住所:岡山市北区春日町5-6岡山市勤労者福祉センター2階
TEL:086-231-1141
所長弁護士:井上雅雄

◆岡大支所◆
住所:岡山市北区津島中3丁目1-1(岡山大学文化科学系 総合研究棟1階)
TEL:086-898-1123
支所長:水谷賢

◆津山支所◆
住所:津山市京町73-2 丹沢ビル2階
TEL:0868-31-0035
支所長:高木成和

◆玉野支所◆
住所:玉野市築港1丁目17-5 サニーセブンビル202号
TEL:0863-33-6113
支所長:豊芦弘

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